私たちがこれから失う四つのもの
ポストモダンの共産主義 はじめは悲劇として、二度めは笑劇として (ちくま新書)
- 作者: スラヴォイ・ジジェク,栗原百代
- 出版社/メーカー: 筑摩書房
- 発売日: 2010/07/07
- メディア: 新書
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スラヴォイ・ジジェク著/,栗原百代訳
難しい本だった。翻訳の文章が悪いからではなく、ジジェクが言葉で説明することが難しいことをあえて伝えようとしたため。歴史と哲学、精神分析についての知識が必要。たぶんほとんど理解できていないが、一番印象に残ったところを。
- 資本と市場経済のグローバル化によって、私たちは悲惨な将来を迎えつつある。
- 水や農作物、燃料を失う
“失う”の代わりに“ビジネス”という単語を入れると、いま流行の産業になる。近い将来、無料なのは空気だけになるのだろうか? そんなことは無い。排出権取引によって“空気”の料金も製品価格か税金として請求書に加算される。 - 仕事を失う
年間収入が100ドルに満たず、しかも賄賂と脱法行為がまかり通っている国を探せば、意外と近くに見つかるだろう。そこへ高度な生産装置とマニュアル、そして残酷な看守をセットで送り込むだけで、今の社員をお払い箱に出来る。囚人が待遇改善を訴えたらどうするか? 別の収容所を他国につくるだけだ。 - 遺伝子を失う
健康診断の結果、あなたは糖尿病になる確率が平均の倍以上あります。金のかからない健康保険組合を維持するために、あなたの採用は見送らせていただきました。なお、末筆ながら就職活動のご成功をお祈りいたします。…。やれやれ、ついに祈るところまで追い詰められたか。 - 平等を失う
いまだって平等とはとてもいえないが。近い将来、金持ちと貧乏人の壁はヒマラヤよりも高くなるだろう。壁と警備員によって守られた住居・学校・ショッピングモール・プライベートビーチ・会員制クラブは世界中にあり、そこに暮らす一握りの人々が新たな貴族階級となる。彼らが高度な教育と美容整形・遺伝子治療、有力な名家同士の婚姻によって、この世紀の半ば頃には一目見ただけで、新しい貴族様とわかるようになることは、ダーウィンの名にかけて間違い無い。
- 水や農作物、燃料を失う